【スピード&持久力向上】筋肉の乳酸代謝能力を高めるTペース〜ジャック・ダニエルズ式練習法〜

どうも!

パーソナルトレーナー・アスレティックトレーナーとして培った知識・経験を発信している市民ランナーのジュンです!

ジャック・ダニエルズが考案したVDOTというパフォーマンス数値を計算することで、トレーニングでの練習ペースを設定することができるということを書きました。

VDOTの計算方法や解釈はこちら

VDOTを計算し、Trainingの欄に距離ごとに5種類のペースタイムが出てきたかと思います。

今回はそのうち“Threshold(T)ペース”で行うトレーニングについてご紹介します。

乳酸性作業閾値(Lactate Threshold:LT)とは

Tペースについて書く前に、乳酸性作業閾値(Lactate Threshold:LT)について説明しなければなりません。

乳酸はよく疲労物質として出てきますが、やや誤認があります。

ヒトが、糖質を運動のためのエネルギーに変える際に乳酸が発生します。そして、その乳酸は酸素を用いて、筋肉内でさらにエネルギーに変わります

前者がいわゆる無酸素運動、後者が有酸素運動と言われるエネルギー代謝の仕組みです。

有酸素運動でも、無酸素によるエネルギーも使い、それによって生成された乳酸をさらに有酸素運動でも利用するという仕組みになっているため、有酸素運動では血中の乳酸濃度には大きな上昇は見られません

しかし、スピードを上げていくと、ある一点で急激に血中乳酸濃度が上昇します。これが乳酸性作業閾値(LTです。

LTは有酸素運動と無酸素運動の境とも言われており、LT以上のスピードでは無酸素によるエネルギー生成が多くなり、乳酸も多く発生するため、筋肉による乳酸の代謝が追いつかなくなるため、血中濃度が上昇します

TペーストレーニングはこのLTに該当するスピードで行うトレーニングになります。

Tペーストレーニングの概要

ランニングの強度としてはVO2maxの83〜88%、最大心拍数の88〜92%となります。

Tペースは2時間以上持続することができるペース(Mペース相当)よりも若干速いペースであり、30分間持続できるペース(上級者の10kmレースペース)よりも遅いペースとなります。

10kmレースペースは血中乳酸濃度が上昇し続けており、Mペースは途中から血中乳酸濃度が低下して行くためです。

よってTペースは50〜60分持続できるペースとなります。

LTを正確に測定するためには、ラボのトレッドミルでランニングしながら採血をして、血中乳酸濃度をモニタリングしなければいけませんが、VDOTを用いれば、それも不要です。

赤枠で囲った部分がTペースとなりますので、まずは自分のペースを確認してみてください。

効果

筋肉での乳酸代謝能力の向上による、LTスピードの向上

ジャック・ダニエルズは、LTスピードが向上することで、今までそのペースで走れなかった距離を走れるようになると解釈し、「持久力向上のためのトレーニング」と表現しています。

しかし、私は今まで走れなかったスピードで、長い距離を走れるようになると解釈して、「スピード向上のためのトレーニング」と考えています。

どっちも言ってることは一緒なので、それほど気にしなくても良いと思いますが、Tペーストレーニングは、陸上長距離種目において極めて効果の高い練習になります

方法

基本的に持続して走るペース走(テンポ走)とレストをはさむクルーズインターバルの2種類があります。

ペース走(テンポ走)

20分以上の時間をTペースで持続して走るトレーニングです。

上でも書きましたが、Tペースは50~60分持続できるペースになりますので、60分以内でも構わないようですが、効率を考えると20分程度でも良いようです。

重要なのは一定のペースを保つことです。
ペースが速くなったり、遅くなったりすると、乳酸生成と代謝のバランスが崩れてしまい、LT向上の効果としては小さくなってしまう可能性が高いです。
調子が良いからといって、途中でペースを上げることやラストスパートも避けるべきでしょう。

比較的短い時間でできる、非常に効果的な練習であるため、コンディションが良ければ、積極的に取り入れたい練習です。

クルーズインターバルトレーニング

短いレスト(休憩)をはさんで、Tペースでのランニングを行うトレーニングです。
ランニング時間は3~15分間とし、レストはランニング時間の1/5となるように設定します。

距離とレストの設定の例としては、

  • 1,000m 8~10本 30~60秒レスト
  • 1,600m (1,500m) 5本 60秒レスト
  • 3,200m (3,000m) 2~3本 120秒レスト

といったところです。
レストが長くなり過ぎず、Tペースが持続できるのであれば、多少のアレンジも良いかと思います
クルーズインターバルもペース走同様に、一定のTペースを維持することが重要です。

テンポ走と比べて距離は長くなりますが、レストをはさむためTペースは持続しやすくなります
ペース走でペースを維持できない場合でも、クルーズインターバルでならペースを維持できることもあるかと思います。
インターバルトレーニングが好きな方にはオススメのトレーニングメニューです。

私の練習への取り入れ方

上でも書きましたが、私は「スピード練習」の位置づけで、メニューとしてはテンポ走もクルーズインターバルも両方行っています。

時間があまりとれない場合は20分のテンポ走、時間があって距離を走りたい場合はテンポ走の時間を長くするか、クルーズインターバルを行うことが多いです。

クルーズインターバルは1,000m×10本で、レストは200mジョグ(90秒程度)のプロトコルで行います。

レストが長いのですが、完全休息ではなくジョグにすることである程度長くても効果を落とさないようにし、Tペースを維持することができるようにしています。(根拠については、少し怪しいかもしれませんが…)

頻度は多くても週2回で、レース前の調整ではクルーズインターバルは行わず、20分のテンポ走を刺激入れに行っています。

いずれのトレーニングもTペースを維持することが重要ですが、できるだけ平坦でコーナーが緩く、風も弱いコンディションでないとなかなかペースを維持することができないため、トレーニングの場所には苦労します。

トラックを利用できる環境があれば、トラックで行うことがベストだと思います。

上にも書きましたが、Tペーストレーニングは陸上長距離種目において極めて効果の高い練習です。
さらなるタイムアップのためには必須のトレーニングです!

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